書籍で話題のティール組織のメリット・デメリットと実例

従来の日本の組織や経営のマネジメントは、上下関係やルールに基づいて秩序を保ち、大勢で目標を共有して行われるものでした。そのような風潮のなか、これまでの常識をくつがえす新しい組織・経営マネジメントのあり方として注目されているのが「ティール組織」です。今回は、海外発の組織の概念であるティール組織の特徴やメリット・デメリットなどについて解説します。

ティール組織とは

プラン

ティール組織とは、「組織をひとつの生命体としてとらえるという概念」です。

組織に上下関係を作らない、共鳴で行動する組織

組織が築き上げた上下関係における上層部が組織全体を管理するのではなく、組織に所属するメンバー全員が共鳴しながら行動をとるスタイルといわれています。

ひと握りの人間が指示や命令を出すのではなく、組織の目的を実現するためにメンバー全員で共鳴しながら業務を遂行することが求められるのです。しかし、ティール組織と言う概念をただ導入しても、それがすぐ結果として出るわけではありません。

ティール組織のメリット・デメリットとはいったい何なのでしょうか。

メリット

企業に所属している全員に意思決定権があること

ティール組織のメリットは、企業に所属している全員に意思決定権があることです。そのため、一人ひとりが責任感を持って行動することになり、それがひとりのスキル向上につながります。

ティール組織は、従来の組織のように権利がひとつに集中していません。全員に権利が分散されているので、権利の乱用や上層部の独断による暴走などが起こる心配がないのです。

小規模な企業でなければ実現は難しいかも

ティール組織は、小規模な企業でなければ実現は難しいと一部で思われています。しかし、ティール組織の土台が確立できれば、組織の規模は関係ありません。

企業に所属する人数の数に関係なく実現できるのが、ティール組織のメリットです。また、ティール組織は、ビジネスモデルを限定しないこともメリットといえます。

デメリット

従来の組織論は試行錯誤を経て体系化された、完成されたものでした。しかしティール組織は、あくまで概念であり他の組織論に比べるとまだ歴史も浅く、しっかりと体系化されたものではありません。

組織論として確立できていないのがティール組織

あくまで概念であり、組織論として確立できていないのがティール組織なのです。企業がティール組織を導入する際は、その組織に合った方法論を模索する必要があります。

組織論として見た場合、体系化されておらずまだ曖昧な存在であることが、ティール組織のデメリットといえるでしょう。

ティール組織のamazon書籍

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2018年、ティール組織に関する書籍が日本でも販売され、amazonを中心に5万部を超える売り上げを達成しています。日本の大学教授や企業の取締役も絶賛している、この書籍はどのような内容なのでしょうか。

ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

本書は、2014年に販売、12カ国語に翻訳され全世界で20万部のベストセラーとなった書籍です。著者のフレデリック・ラルー氏は、2年半にもわたって新しい組織モデルを構築すべく世界中の組織の調査を行い、本書を執筆しました。

過去の組織モデルとの比較

本書では、過去の組織モデル数点を取り上げそれぞれの特徴を考察し、進化型の組織モデルであるティール組織が、変化の激しい今の時代にいかにふさわしいか説明しています。

そして、実在の企業の実例を取り上げ、いかにティール組織が企業運営で有効であるかを、具体例を挙げて解説しているのが本書の特徴です。

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ティール組織の事例

パワー

ティール組織の提唱者であるフレデリック・ラルー氏は、自著で「ティール組織を実現している真に先進的な企業はほとんどいない」と述べているほど、ティール組織は世界ではまだ定着していません。

それでもラルー氏は自著内で、それぞれの解釈で実践している企業の事例を紹介して、ティール組織を解説しています。

海外企業での実例

ラルー氏は、自著にてティール組織を実践している企業の実例を10以上も挙げて、ティール組織がいかに企業にとって有効であるかを説明しています。ティール組織を実践し成功した組織のひとつが、非営利組織であるBuurtzorgです。

この組織は、具体的にどのようなティール組織を業務に導入したのでしょうか。

Buurtzorg

Buurtzorgは、オランダにあるヘルスケアに関する非営利組織で、2006年に設立されました。7万人を超えるオランダ最大の地域看護師組織として、高齢者や病人の在宅ケアサービスを提供しています。

Buurtzorgが管理業務全般で取り入れたティール組織の事例は、上司やエリアマネージャーの制度を廃止してのチーム編成の導入です。1チーム10〜12名ずつのチームを組み、業務全般を自分たちで取り組み全員が業務で発生する問題に対処しています。

業務に対しての権限のある上司などは存在しませんが、意思決定権のないコーチという存在を配置し、必要に応じてチームメンバーにアドバイスをするというやり方です。

ティール組織の日本での例

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ラルー氏がティール組織について解説した著書は日本でも5万部以上の売上を記録していますが、まだこの概念を知らない人も少なくありません。しかし、日本の企業でもティール組織の概念をいち早く取り入れて実践している企業も存在するのです。

日本企業の実例

日本でティール組織を実践している企業も存在し、注目を集めています。この企業は、従来のマネジメント経営を廃止し、一人ひとりの自己管理を実践している会社として急成長を遂げているのです。

ティール組織を導入して成功を収めている企業を、次の段落から紹介します。

日本企業ではオズビジョンが実例

ティール組織を導入している企業は「株式会社オズビジョン」です。東京は港区にオフィスを構えるこの企業は2005年に設立され、従業員50人を抱えています。

事業内容は、ネットショップ運営などの購買プラットフォーム事業です。オズビジョンは、ポイント・コマース・プラットフォームのサイトである「ハピタス」、キュレーションサイトである「レタス」というサイトを運営しています。

ハピタスは会員数が約200万人、提携ショップ数が約3000社、年間流通総額が約400億円です。

ティール組織の具体的な方法・実例

オズビジョンが行っている経営方法は、セルフマネジメントです。一人ひとりがリーダーシップを発揮し主体的に判断する方針で、それにより生産性を高めるという考え方を実践しています。

そして、ホールネス(全体性)という概念の導入です。時間や場所にこだわらない労働環境、仕事とプライベートを分けない働き方など、仕事も人生の楽しみと解釈することが大事とされています。

「人の幸せに貢献し、自己実現する集団で在る」という理念を掲げて、それを実現するためティール組織を導入しているのがオズビジョンという企業なのです。

社員、カスタマー、パートナー、地域社会、出資者という5つのステークホルダーの本質的な欲求を充足させることで、可能性を最大限に発揮することを目指して業務を行っています。

ホラクラシー経営・ティール組織の違いとは

ホラクラシー経営とティール組織の違いは、提唱者が異なること、そして、前者が確立された経営方法、あるいは経営を実践している企業であるのに対し、後者はひとつの概念という点です。

ホラクラシー経営が「ある定められた組織運営手法に則って運営される組織」という明確な定義がされています。それに対し、ティール組織は「ティールという概念、世界のとらえ方で成り立っている組織」という考え方です。

あくまで概念であり、具体的な経営方法は定義されていません。

そのほか、ホラクラシー経営と似ているのが京セラやJALでおなじみの稲盛和夫氏が提唱しているアメーバ経営。アメーバ経営も経営管理手法であり、再現性のある仕組みで強い組織を作って行くというものです。こちらにも興味がある方は合わせてどうぞ。

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