イギリスの強豪マンチェスターユナイテッド、スペインの強豪アトレティコ・マドリードやイタリアの強豪クラブインテル・ミラノなどで活躍した元ウルグアイ代表で、2010年にFIFAW杯のMVPにも選出されているディエゴ・フォルラン。彼は2015年に日本のサッカークラブセレッソ大阪に入団し、話題となった。
しかし、目立った活躍がなく海外のクラブに移籍してしまった。世界を舞台に活躍してきた彼が日本であまり活躍できなかったという理由と周りの選手達に対してどのような事を感じていたのか詳細はあまり語られてこなかった。
フットボールチャンネルに改めて語られているので、世界で活躍してきたディエゴ・フォルランが日本のサッカークラブで、他の選手に対して感じた事や仕事・プロという人の働き方について学ぶ点が多かったので、紹介したい。
ディエゴ・フォルランとは
ディエゴ・フォルラン・コラソ(Diego Forlán Corazo, 1979年5月19日 – )は、ウルグアイの首都モンテビデオ出身のサッカー選手。元ウルグアイ代表。ポジションはフォワード。バスク系ウルグアイ人。
ヨーロッパ・ゴールデンシューを2度受賞しているストライカー。サッカーウルグアイ代表の最多出場記録保持者であり、2010 FIFAワールドカップではMVPに選出されている。
セレッソ時代に活躍したときのゴール動画
日本でもそのテクニックで多くのゴールをもたらし、日本人のファンをも魅了した。
同時期に一緒に練習や試合をしていたメンバーにも多くの影響を与えた事は間違いない。
そんな彼がともにサッカーをした日本人のサッカー選手に対してどのようなことを考えていたのか?
日本人選手の多くがフットボールを仕事のように感じている
フォルランは、フットボールチャンネルに対して、次のように語っている。
「フットボールはロジカルなものではない。“感じる”ことが大切なんだ。選手とは創られるものでもないし、生まれるものでもない。才能があっても一生懸命練習をしなければ優秀なプロ選手になれない。そのためにはプレーすることに幸せを感じ、パッションを感じていなければ無理だろう。
有名選手で、クリスティアーノ・ロナウドが毎日次のようなメニューを行っているという。このようなメニューを見ると「サッカーを仕事と捉えていてもその前準備が大切」だということ。仕事で成果を残すというのが例えばサッカー選手なら各々のポジションで求められていることや、複数のポジションでうまくこなすということ。
クリスティアーノ・ロナウドの場合でいえば、得点を量産するということである。そのために何をやらなくてはいけないのかを考えて実行し、それを日課として継続しているというからプロフェッショナルだ。
日本人選手はある程度でも満足できるような所得やサッカーのできる環境が海外より整っていて、遊ぶ場所も多く怠けてしまう選手も少なくないようだ。W杯のときに日本人選手がお酒を飲んで新聞に掲載されたこともあったが、「勝つことや自分のポジションで成果を残すことに貪欲ではない」という印象は拭えない。
スクワット(150kg) 6回×4セット
ベンチプレス(100kg) 6回×4セット
クリーン(75kg) 6回×4セット
レッグプレス(200kg) 6回×4セット
デッドリフト(200kg) 6回×4セット
ショルダープレス(70kg) 6回×4セット
アームカール(30kg) 6回×4セット
トライセプスエクステンション(30kg) 6回×4セット
ラットプルダウン(75kg) 6回×4セット
腹筋3000回の日課に加え、これを月曜日と金曜日で分けてやる
その上でフォルランは、次のように語っている。
タイムカードを押して8時間働いて、お疲れ様というのとは大きく異なる
私が日本と他の国との大きな違いを感じたのは、日本人選手の多くがフットボールを仕事のように感じていることだ。たしかにプロ選手はそれでお金をもらっている。しかし事務所にいって、タイムカードを押して8時間働いて、お疲れ様というのとは大きく異なるんだ。
社会人になりサラリーマンであれば、会社で働いて就業時間が終われば即帰宅して自由なことをやるという人が多い。それでも給料が上がっていくという奇跡的な大企業もあるからそのようなことがまかり通ってしまう。
しかし、サッカー選手などのように枠が限られている中で、その中で選手になったにもかかわらず、フォルランがいうような選手がいるというのが驚きだ。どこの世界にも、何をしていてもそういう人がいるということ。
また、世界のプロフェッショナルに対しての考え方が違い、目指しているレベルの高さによって目線も異なる。フォルランが言いたいのは、「自分はここまででいい」と自分で制限せずにせっかくプロになったのであれば、もっと上を目指すという貪欲さを持って欲しいということだろう。
日本人は今与えられたものの中で頑張るという精神が非常に強い。ファンとしても、とにかくチームが勝つように応援するというだけではなく、「海外ファンは目が肥えている」という言葉があるように、チームや選手がおかしければもっとうまくなるように適切に批判をするというのも大事なのではないかと考えさせられる。
ただ応援するだけではなく、それがチームや選手を強くし、一丸となって戦うということなのかもしれない。
スポーツはそのようなものではない。フットボールだけではなく、多くのスポーツにおいて、サクリフィシオが要求される。天職以上のものであるという感覚をもち、パッションを感じて取り組まなければならないものだ」
ACLを日本人の誰もが重要視していない
「何かを言葉で伝えるというわけではない。私は試合に出てベストを尽くす。それを他の選手が見て自分に必要だと思うことを取り込めばいい。同じように私もセレッソのチームメイトを見て何かを学ぶんだ。ウルグアイ代表のチームメイトも私から何かを学んだものもいれば、そうでないものもいる。セレッソの選手が私から何かを学ぶのはそれぞれ選手次第なんだ」
フォルランはウルグアイの選手や世界の多くの選手から尊敬されている。そんなフォルランは試合に出て活躍をして、その姿を見せることによって影響を与えてきた。そして謙虚にチームメイトからもいいところを学ぶ。そういう姿勢がプロフェッショナルには必要で、世界で活躍できる選手になるということなのかもしれない。
仕事の場面においても、最初から自分のスタイルを貫くというわけではなく、「活躍している人を真似る」ところから始まる。そして成果を出していく中で自分のスタイルが確立されていくことになる。初めは真似から始まらなければ学習速度が遅く、時間が経過してしまう。特にサッカー選手の寿命は平均して10~15年程度だ。その中で活躍しなければならない、活躍しなければなった意味がないという中で、サラリーマンや社会人も学ぶことが多いのではないだろうか。
世界で活躍できるような日本企業を作ること
「日本には優れた選手が揃っている。Jリーグもいい。しかし問題なのはAFCチャンピオンズリーグで勝てないことだ。日本代表には海外でプレーする選手が揃い、レベルも高く、中国や韓国にも勝利している。しかしJリーグのクラブはホームでもアウェイでも勝てない。
サッカー選手に限らず多くの活躍している日本人は世界に飛び出していっている。そういう人のいいところを日本に持ち帰って、企業を作るなりしなければ日本企業や日本の経済が危ぶまれているというところにも共通するところがある。
日本から世界にでるような企業が少なく、産業は車や電子メーカー、商社、広告など主要なものがここ数十年変わっていない。勿論それが悪いわけではないが、日本から世界を相手に戦うような企業が生まれさせなければならない。
フォルランの言葉はサッカーというスポーツだけという視点ではなく日本の経済や社会、そういうところにも転用できる言葉が多い。
Jリーグは成長している。しかしそれを国際試合の領域に広げていかなければいけない。世界に目を移せば国際トーナメントの方が自国リーグよりもはるかに重要視されている。日本はその逆だ。ヨーロッパチャンピオンズリーグはワールドカップの次に重要な大会だ。リベルタドーレス杯は3番目に重要な大会だ。
しかしAFCチャンピオンズリーグを日本人の誰もが重要視していない。国際トーナメントにもっとモチベーションを高めるべきだ。日本のクラブチームは国を代表すると意識すべきだ。国を代表していることを意識し、誇りを感じるべきなんだ。日本に残った選手のレベルを上げ、彼らが代表のベースとなり、成長していかなければいけないだろう」
日本人は国民性的にナショナリズムのある発言をすることを良しとしない。そういう発言をする人をおかしな人とレッテルを張り、除け者にする。会社でもみんなが「右というから右だ」という人が多い。
しかし、大抵何か変化を起こすにはそういう発言や行動が必要になる。なぜ日本ははみ出しものを許容できない社会になってしまっているのか。
日本のどこの組織にも共通している闇
組織力が高いというのは、企業やサッカーなどのスポーツにおいても重要であり、そういうチームほど個々の能力以上の強さを時には発揮することがある。
最終的に一つの考えや目指すべき方向に対して皆んなが心から共感し、一つにまとまるから良いのだが、そのレベルを高めるというのが大事だ。
とにかく「誰々が言ったからそれが正解」というワケではなく、間違っていたら間違っていると言わなければならないし、それが悪いことなのではない。レベルを上げるために言っているだけなのだ。
私も組織の中にいてマイナスな事を言う事が多い。それはなぜかというと誰も言わないからである。全てに対してマイナスな事を言っているワケではないが、他の人が言わないので言うしかないのである。
誰もそんな損な役回りをしたいワケではないが、そうしないと返って全員にとってマイナスになるという事を言いたがらないのだ。
本田圭佑の発言がなぜ目立つのか
サッカー選手で言えば本田圭佑の発言がよく取り扱われる。彼は強い言葉をよく使うからか、メディアで取り上げられやすい。メディアの使い方を知っているからかそういうメッセージほど届きやすいし、変化を起こす。
しかし絶対にやりにくい、扱いにくいと考えている人も少なくはないはずだ。それでも彼は前を向いて次を見据えて将来のために行動を起こしていっている。サッカー選手だけでなく、経営者としても新しいサッカーチームを買収し、育てていっている。
5年で、欧州クラブの最高峰である各国のリーグでの上位チームしか出場できないチャンピオンズリーグに出場させようという無謀な挑戦を進めている。
変化を起こすには人が言わないような発言をして、行動を起こしていくしかないのである。
さいごに
今回はサッカー選手であるフォルランの日本でのサッカー経験からの発言で、社会人としても学ぶことが多いという内容を紹介した。耳の痛い言葉というのは危機感を感じることができる。危機感がなければ中々問題に気づくことができないこともあるだろう。
フォルランのいうようにプロフェッショナルとして、仕事について成果を残すことを考えて、問題を先延ばしにしたり、問題に目を瞑らずに将来を見据えてどんどん行動を起こしていかなければならない。
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