仕事において感情は、判断を鈍らせてしまうので会社の利益になることを優先するという意味ではできるだけ排除して考えるべきだ。しかし、人間というものはそこまで合理的に・効率的に判断できないもの。
感情によって人間関係がおかしくなって修復できなくなって会社を辞めるという人も少なくない。ロボットが働いているわけではないので、人の事を考えた言動をしないと組織・会社としては大きくならない。
なので、その人その人に応じたマネージメントというのが大切になる。
それでなければそもそもマネージャーという階層は必要なくなってしまう。
今回は、社会を舐めているという言葉を発した先輩と、その言葉を言われて1年後転職して出世して行った後輩の話。
どこの企業でもよくある話だが、改めて人をマネージメントする時の感情について、考えてみたい。
大切なのは先を見据えて働くこと
「お前は社会を舐めている」と言った人物は当時29歳(B)、言われた方が22歳で新卒でベンチャー企業に入社した。29歳の先輩は、転職して同時期に入社した人だった。
Webデザイナーとして二人とも入社して、会社の業種や事業としては、会社のホームページやアプリなどを受託開発(クライアントから仕事を請け負う開発)を行っている企業だった。
受託開発をしている企業で、かつベンチャーだったのでWebデザイナーであっても電話応対など窓口としてもクライアント対応をしつつ、自分でデザインやコーディングをしてウェブサイトを作り納品するという流れ。上流工程から下流まで全て対応していた。
入社してまもなく、22歳仮に新卒Aとしよう。Aは未経験のWebデザイナーとして入社した。元々大学時代に企画営業のアルバイトをしていたことがあったので、人当たりにはある程度の自信があった。そこからWebデザイナーに転向して新卒で入社した。
Aはベンチャー企業でいきなり多くの仕事を振られることで成長していったが、他の大手企業のように入社時に研修を受けていなかった。しかしある程度企画営業していたという実績があったので、社会人として基礎的なマナーはできてきた。
徐々に成長して、多くの仕事を与えられていくAに対して、先輩であるBは嫉妬したのかある日に「お前は社会を舐めている」といった。
実力主義の世界でも人格は大切
Aは明るい性格だったので、何か暴言を言われた事に対してなんとも思っていなかった。
むしろポジティブにWebデザインやディレクション、営業としての力を身につけて、クライアントを納得させることで見返してやればいいと思っていたそうだ。
Aはどんどん仕事を振られて、そして自分で予算をもって営業としてもWebデザイナー・マークアップエンジニアとしてもどんどん成長していった。
しかしベンチャー企業のために評価制度等が曖昧で評価されないことに不満を感じ、やがて業界でも大手のIT企業に転職することになった。年収は2倍以上になり、やりたい事業となりたい職種を手に入れた。
Aはなりたい道を手に入れて自分の新しい人生を切り開いていったのだ。
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一方Bは、性格にムラがあり、感情的になりやすく、仕事のパフォーマンスにも偏りがあった。
Webデザイナーとして入社したものの成長できないとみるやすぐにディレクター職に転向した。自分でも一回手を動かせる人になっておけば多少のマネジメントができるという考えになるのは間違っていない。
しかし、「お前は社会を舐めている」と言い放ってしまうような根本的な人間性に問題があった。短気な性格なので、デザイナーやエンジニアのマネジメントをうまくできず、仕事もうまく回らなくなって、ドツボにはまっていく。そして最終的に会社からも一緒に働く人からも評価されない状態になった。
ちょっとした言葉や人間性によって、人はどんどん転がり落ちていく。
転がり落ちていった場合、環境を変える以外にリセットする機会がない。
Bはディレクターになったが伸び悩んでいて、ディレクターになると成長した先のキャリアは、プロダクトマネージャーか経営層にいくかしかない。そのままディレクターとして年齢を経て行くと一生働き続けなければいけないことになる。
やがてBは転職したが、IT部門が力がない大手企業に入社した。
それはBが望んでいたものではなかったが、自分の転職できるという範囲内ではそこしか受かる企業がなかった。
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昨今の実力主義、成果主義の流れの中で、「実力さえあれば何をしてもいい」という考えに陥ってしまうことも少なくない。
実際、受託開発などで大手企業への営業にいくと驚く態度で接されることもある。しかし、ここで一度振り返って見て欲しい。
「その態度は企業全体にとってプラスな態度なのか」、「自分が一人で会社をやっているとしても同じ態度をとるのか」、
「人としてどうなのか」と。
Bの例では、そもそも人間性に疑問が残る。社会人経験の長さが「人格・特定能力」が優れているという理由にもならない。
「社会を斜めにみることをかっこいいとしていて、自分は全てをわかっている」という上からな発想によって出た言葉だ。
社会に出たら、先輩・後輩の関係性は、あるかもしれないが基本的に「ビジネスの世界は無差別級」である。何かのスキルや数字で上回ってしまうこともある。
先輩・後輩の前に人間として正しい姿勢で接することが大事なのではないだろうか。
ついつい社会人歴が長くなってくると先輩風を吹かせた言葉を発してしまいそうになるが、自分が何者なのかを考えてマネージメントには気をつけたい。最終的に大切なのは人間性だ。