The FinTech Nights:Tech時代の起業家へのエールのイベントレポート

今回の記事は、2016年7月5日(火)に行われた第3回The FinTech Nights:Tech時代の起業家へのエールというイベントの書き起こし記事になります。Fintechや起業に興味のある学生や社会人が集まった同イベントではこれから起業しようとしている人へのエールと題してキャリアやマクロ視点の市場動向について様々な講演がされました。

http://fintechnights.peatix.com/

登壇者
登壇:マネックス証券株式会社チーフ・ストラテジスト 広木 隆 氏
慶應藤沢イノベーションビレッジ
インキュベーションマネージャー 廣川 克也 氏
フェムトグロースキャピタル 代表取締役社長 磯崎 哲也氏

マネックス証券株式会社チーフ・ストラテジスト 広木 隆氏の基調講演からになります。

ブラックスワンとはテールリスクのことです。
ありえないくらいの事象のことであり、絶対に行われないようなことでも以外と起きるのです。

典型的なのはハリケーンなどの自然現象や、
金融経済ではリーマンショクなど起こり得ないことが起こってしまうのです。

しかし、まさかというようなことが起きてしまうのはなぜか。

金融工学は発展してきたが、もともとは正規分布を用いて計算していました。
しかしそれでは不十分で、金融や経済は綺麗な形ではないのです。

今日の講演では3つのメッセージをお伝えしたいと思います。

ブラックスワンはよく起こるということ

ブラックスワン

出典:http://topicks.jp/2475

資本主義が終わりかかっている。そのあとに、新しい経済システムがくるという時代がきているように思う。
実際に黒い白鳥がいないと思っていなかったのに、現在はいるように。
資本主義というシステムが壊れてしまうかもしれない。
最後のテーマはそういう時代がきたときにどうすればいいのか。

そういう時代が来た時にはこれから起業する人にとっては新しいチャンス。
今は既得権益に対する反乱というのが起こってきている。
そういう層が行き詰まってきている。

日本が戦後の焼け野原から這い上がってきたように、
大きな危機のあとのチャンスがあると思っている。

BREXITについて

国民投票では決まったが実際に抜けられるかどうかはわからない。
普通はベネフィットがたくさんあるのに、離脱派が勝ってしまった。

イギリスの東側の地域は昔は漁業が盛んだった。この地域はEUの規制によって、漁業がダメになった。
西側から来た人たちによって不公平感が高まってきた。

フランス、イタリア、スペインではイギリスと同じように
現体制ではないところに多くの票が動いている。

トマピケティが書いた21世紀の資本
国民所得に対してトップ1%がその国の20%の所得を占めている。
アメリカではウォール街でデモがあったように、強烈な格差が広がっているということ。
アングロサクソンの国は格差が広がっている、だからBREXITが起きてしまった。
トランプ現象も移民を返すなどにている。
白人の票を集めているのは移民がきていることを返すことによって、票を集めた。
アメリカはバーニーサンダース

ヨーロッパや日本などは格差は広がっていない。
どうして格差が広がるのか。

R>G
資本のリターンは経済成長率(=金利)より高い
金持ちの子はどんどん金持ちになる。これがピケティの主張。

アメリカの中間層というのがどんどん細くなっていってる。
中間層は49で富裕層と低所得層を合わせたら51になるというのが凄い状況になってしまっている。

安定を保てたのは中間層が多い時代、一番人口が多い中間層に対して情報を配信して、票を集めていけばいいから。
現代は政治的にも非常に難しい時代になってきている。

2000年
貧困層 中間層 富裕層
28 55 17

2014
貧困層 中間層 富裕層
29   51    30

お金持ちか貧困かという流れになってきてしまっている。
政治も主張も不安定化している原因になっている。

レバレッジをかけるというのが株式会社のメリット
ただ同然でお金借りられるのはリターンが高い。

資本の取り分が大きくて、労働の取り分が減っている。
一人当たりのGDPは右肩上がり。
所得の中央値が伸びていないのは、おかしい。これは一体どういうことなのか?
偏った誰かが資本を取得していて、労働への配分がされていないということ。
S&P500が伸びているが、売上は2倍、その同じ期間に利益が5倍になっている。
これは労働者に所得が配分されていないということ。資本やその資本家が動かしているテクノロジーにお金が回っている。

人間の労働生産性について

雇用者が2000年に入ってきたくらいから、雇用が伸びてなくても生産性が伸びている。
これは技術のイノベーションが起きている。ロボットや機械が労働を担うようになってきている。
リーマンショックの時に労働人口は減って、労働生産性が一気に上がった。
人はこの時代にいらなくなってきている、テクノリジーがあれば人がいらないという時代になってきてしまった。

アメリカの労働生産性が伸びない件について

余計な人を雇用しすぎている。景気がよくなってきたから、低い生産性の人間を雇ってしまった結果
全体の生産性が落ちてきた。
失業率も毎年右肩下がりになっていて、労働人口も増えていない。
つまり、人を雇う必要がなくなってきている。

高いスキルの人にお金を回るようになってきた。
そして全体のアベレージが安くなってきた。アベレージな仕事は機械がやってくれるから。
労働生産性は上がったのに、アベレージの給料が増えていかないということは
資本かロボットなどのテクノロジーにお金が回るようになっていっている。

利回りが下がるということは債権の金額が上がるということ。
バブルがどこにあるかというのは国債がバブルになっている。
これは非常に危険なバブルになっている。

タイラーコーエン 大格差

希少なもの
1. よい土地、天然資源
2. 知的財産 どういう商品をつくるべきかというすぐれたアイデア
3. 特殊技能を持ったすぐれた能力

希少でないもの
1. 低技能の労働力
2. 預金や国債の形で保有されている資金=特別な権利をともなわない単純な資本

お金を発行しすぎたから金利が下がっていってる。
金利が下がっているのにさらにお金を貸そうとしている。
異常な事態に陥っている。

➡️ これからの企業における資本はそれほど重要ではなくなってきている。
なぜならシェアやミニマリストという概念が出てきたから。

シェアの概念とミニマリスト

フランス人は服を10着しか持たないという書籍がベストセラーになった。
こういう書籍の流行でもわかるが、だんだん人々の中で所有の概念がなくなっていっている。
ミニマリストやものを持たない人。シェアリングエコノミーが伸びてきているのもそういう背景がある。
消費者の側がそういう時代になってきている。

労働者=消費者
消費者がものを買わなくなってくると、資本主義はどうなっていくのか。

ヘリコプターマネー
お金をばらまいて、お金を使わせる

ベーシックインカム
社会保障の一種。お金のバラマキ

この二つは資本主義ではなく、社会主義になっている。
ベーシックインカムは試験的に導入されている国もあるが、日本やほかの国でも検討されていることは間違いない。貧富の差がさらに大きくなっていくという中で、起きてもおかしくない社会になってきている。

ここからは慶應藤沢イノベーションビレッジ インキュベーションマネージャー 廣川 克也 氏による慶応SFCの若い学生の起業に関するデータとどういう学生がいるのか、どういう相談を行っているのかについての講演です。

SFCと起業について

慶応とSFCではちょっと毛色が異なります。
毎年学生から150~200件起業やビジネスプランの話を聞いていて、その内容に応じて起業の手助けをしたり、キャリアの相談をしたり、ベンチャーキャピタルの紹介をしたりしています。
だいたい最初のビジネスアイデアに対するアドバイスをすると、2回目くる人は半分に、回数を重ねると人数が減っていくんですよね。
最後起業するのが1年で6~9人程度になっているというのが肌感です。

相談にのっていた学生

104_2

「クモの糸」を人工合成 世界が注目するバイオベンチャー
関山和秀(スパイバー代表執行役)

出典:http://www.projectdesign.jp/201411/pn-yamagata/001713.php

相談にのってきた学生はこの10年間で100人程度となっていて、慶応SFCでは多くの実績をあげています。

企業に勤めることについて疑問に感じる学生が増えている

・日本企業だったのが、日本企業でなくなった
・就職企業ランキングも変わってきている

起業家精神とは

・問題解決・解決型人間を目指す
・SFCメガネ
➡️ 世の中の課題をみてみること
・自分ごととして考える
➡ 問題が起きたときに自分が何ができるかを考える

神奈川県の起業等の推移は年々下がっている、
若年就業者数に占める起業希望者の比率も下がってきている。

こういう状況を変えていかないといけないなと考えていて、
2016年に慶応SFCではファンドを設立した。

【鼎談】Tech時代の起業家へのエール

磯崎: ️
ミクロでみるとめちゃくちゃチャンス
日本は起業が少ないし、支援の金額も年間1000億超えている。
そういう中では人がいないのはチャンス。
楽天、mixiなどは1億円とか4億円の資金調達で、1000億、1兆円起業になっているのは
日本の市場くらいしかない。そこに金塊が転がっているのに誰も手にしないという状況がある。

日本の投資家の層はかなり薄い。メルカリはこの間89億円を調達して、時価総額で1000億円以上の価値を持つユニコーン
企業になってきている。
2012年に1億円以上調達した会社が5社程度しかなかった。
2013年は50社になった。
調達金額や調達できるような市場は出来てきている。

一方で100億円以上のバリューで10億調達するという環境も日本ではできてきている。

アメリカでは5兆円投資に回されているが、日本は50分の1程度になっている。
これはもったいないことになっている。日本は金融資産もあるし、チャンスが非常に大きいと思っている。

株式投資で投資すべき銘柄は小型株のパフォーマンス

広木:
日本に上場している株は1500以上の会社がある。
大企業の株が下がっているから全体が下がっているが、日本の一部の企業は元気である。

どういう銘柄がリターンが大きいかというと小型株の方がパフォーマンスがよい。
見過ごされているからというのがその理由。
よい情報悪い情報が大きい企業だと織り込まれてしまっている。
サイズが小さいとアナリストでも知らない、見過ごされている会社が多い。

磯崎:
この企業であればこのくらいの価値みたいなのがシリコンバレーだと存在する。
日本では企業の数が少ないので、価値付けが難しいという状態がある。
だから日本ではチャンスが大きい。

日本のベンチャーキャピタルはほとんど普通株で投資してきた。
世界でみても優先株で投資しないのは日本くらいしかない。

優先株だと1億円入った場合、1億1千万円になるので投資家としての
知識も必要になってくる。
シリーズA、Bで100万程度の投資なら簡単にできる。

まとめ

マイナス金利になっていて起業をする際のファイナンス的なメリットも大きい、かつ日本では起業がそれほど活発ではないのでライバルが少ない土壌でやらない手はないというような内容でした。

これから起業をする人、投資を入れたいけどどういうところがいいのか、株の種類はどういうものなのか、どういう分野で起業しているか悩んでいるという方は参考にしてみてはいかがでしょうか。