Webディレクター・Webプロデューサーがメディア企業で枯渇している問題の考察と採用・雇用の解決策

キュレーションメディア、バイラルメディア、Facebook上で料理、旅行などの情報を動画で提供しているメディアなど、メディア企業も多種多様になってきました。

その中で動画や記事などのコンテンツを作るためにディレクション・編集が必要であったり、エンジニア・デザイナーをまとめる「開発のためのディレクター」が必要であったり、ディレクターと一言でいってもその役割が様々です。

メディアやサービスが多様化してウェブディレクターやプロデューサーが枯渇しているという問題が大手のIT企業でも起こるようになってきましたが、じゃあなぜ「Webディレクター」や「Webプロデューサー」が枯渇しているのか、採用が難しくなってきているのかというところを考えていきます。

メディアや開発のディレクターを探している、ディレクターやプロデューサーの方々は自分たちはこう思っているという情報やご意見がございましたら、ぜひ、お問い合わせください。

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ディレクター・プロデューサーの役割・仕事

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ウェブ製作会社と大手IT企業と二つの企業に所属してきた中で多くのディレクター、プロデューサーのタイプを見てきました。制作会社のディレクターとメディア企業のディレクターでも相当仕事内容が異なりますので、少しまとめておきます。

制作会社のディレクターの役割・仕事

● 社内のデザイナー、エンジニアへの仕事依頼
● 客先へ行って、ヒアリング・顧客折衝
● 外注会社(開発会社、編集プロダクションなど)、フリーランサーへの仕事発注
● スケジューリングと案件ごとの進捗管理
● 案件の規模と予算・人材のアサイン管理
● ワイヤーフレームの作成
● ロケハン

などのような仕事が制作会社のディレクターの役割です。もちろん会社規模や案件が広告案件なのか、ホームページ制作のような案件なのかによっても多少仕事の内容が異なります。

メディア企業のディレクターの役割・仕事

● デザイナー、エンジニアの進捗管理
● デザイナー、エンジニアのプロジェクト・アサイン管理
● 企画立案・仕様書作成・ワイヤーフレームの作成
● ヘルプなどの文言作成
● ブログや社外告知用の文言作成
● プロジェクトや案件のスケジュール管理
● 外注会社の進捗・クオリティ管理

などのような仕事がメディア企業のディレクターの主な仕事です。

制作会社のディレクターとメディア企業のディレクターの仕事は異なる部分もありますが、ディレクターが備えている強みはある程度同じです。ディレクターの強みを分類してみます。

強みの異なるディレクターの分類

● 営業が得意なディレクター
● 編集・ライティングなどのクリエイティブよりが得意なディレクター
● デザイナーやエンジニア上がりでクリエイターのディレクションが得意なディレクター
● 企画力が高くプランニング力の高いディレクター

など人それぞれ強みが異なってきます。これはそれまでの経験やその人自身が伸ばしてきた分野があるので当然異なります。

では、ディレクターの仕事内容や役割、ディレクターの強みがある程度概要を把握できた上で、なぜ大手企業・メディア企業からディレクターやプロデューサーと呼ばれる職種の人が転職していなくなってしまっているのか、について考えていきます。

ディレクター・プロデューサーが大手企業から消える理由

ビジネス

一言でいってしまうと「仕事量の割に、給与が高くなく、キャリアプランが不明確」だからではないでしょうか。メディア企業でサービスを開発・運営しているとディレクター・プロデューサーが担う幅は非常に広いのです。

わかりやすく説明すると、

● コードを書き、プログラミングをするのがエンジニア
● デザインやイラストを描いて、クリエイティブにしていくのがデザイナー

それ以外のすべての仕事はディレクターやプロデューサー、というのが多くの現場の実態ではないでしょうか。

1. ディレクターの仕事の幅が広すぎる

サービスを開発していると必要になってくるヘルプ文言や、お問い合わせに対するメールの返信文言、緊急で出さなくてはいけない、もしくはサービスでキャンペーンなどを行った時のリリース文言など。

ディレクションという言葉の定義も曖昧で、エンジニアとデザイナーがやらないことをすべて引き受けているのがディレクター・プロデューサーになっています。勿論エンジニアやデザイナーが文言を考えているというスタートアップやベンチャー企業もありますので一概には言えませんが、増えているように感じます。

2. キャリアプランの不明確さ

1でエンジニアやデザイナーがやらない仕事を全部やっているとご紹介しましたが、様々な仕事をやっていると「これはディレクター・プロデューサーの仕事なのか」、「ディレクター・プロデューサーとは一体なんなのか」という疑問を抱くようになる方が多いのではないでしょうか。

例えばサービスの改善のために新たな施策を考えます。企画から、仕様作成、その後ワイヤーフレームや画面遷移図、時にはインタラクション(ユーザーがどう体感するか)を考えていきます。その後、その施策をデザイナーやエンジニアにあてて、問題なければ実装フェーズに入っていきます。

このように役割の幅が広すぎて、一つだけ取った時にそれがこの先ずっと生きるスキルなのか、例えば企画から実装フェーズのスケジュールやクオリティ管理をできるようになったとしてもそれに意味があるのか、それは他社に転職した時にどのようなポジションでどれくらい意味があるのかと考えるようになります。

ディレクター・プロデューサーと一言でいってもキャリアプランは不明確なので、それであればよりマネジメントに携わり評価されるような、プロジェクトオーナー(事業責任者)、プロダクトマネジメント(プロダクトオーナー)になれる場所に転職するのではないでしょうか。

3. 職種の制限とそれによる評価制度の制限

大手企業だと職種がある程度で分けられていて、評価制度もそれに依存しています。

ディレクター・プロデューサーといっても強みが人それぞれことなり、それをすべてディレクター・プロデューサーとくくることが難しいのにも関わらず、職種の制限・評価制度の中でやっていかなければいけないので、ある程度職種や評価制度を制限します。

そうするとキャリアプランも難しい中での選択になるので、苦しくなってきます。

勿論どこかに強みがあればそこが強い、ディレクター・プロデューサーとして評価されることもありますが、マネジメント層・(プロダクトオーナーやプロジェクトマネジメントなどの職種と言われる)としてやっていきたい人とすると、少し他のディレクターとは異なります。

プロジェクト全体のPLや予算管理、その先の事業をどうしていくのかを考えるなどをしていくとプロジェクトオーナー・事業責任者と呼ばれるようになっていきます。ここは企業によって役割を分けている場合もあります。

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ディレクター・プロデューサーを失いたくない企業の解決策

ビジネス

これまで受託のウェブ制作企業とメディア企業でのディレクターやプロデューサーの役割の違い、仕事の流れ、求められているもの、評価制度、キャリアプランなどからディレクターやプロデューサーがなぜ消えてしまっているのかを述べてきました。

コンテンツの流通コストが下がり今では多くの人がスマートフォンで動画や記事などんコンテンツを楽しむようになってきました。そして、これはこれからもデバイスが多様化したり、スマートフォンが普及することでより増え続けていくになります。

つまり、開発者が必要なのと同時に企画してディレクションする人は必要不可欠なわけです。

1. 評価を明確化し、評価制度を充実させる

ディレクターは非常に多岐に渡る役割を担っています。エンジニアやデザイナーにも細かく評価制度がある大手企業が多いかと思いますが、ディレクターやプロデューサーにもそれぞれのスキルに応じてポイントをつけてすべての項目をしっかり評価していくという仕組みがあると良いでしょう。

評価するべき項目の一例

● 文言の作成能力
→ ディレクター経験の長い人はどのようにしたらユーザーやクライアントなどに好印象を持たれるか、おかしい日本語になっていないのか判断。新卒のディレクターやプロデューサーは日本語能力やユーザー視点での文言がかけないことが多い。

● プロジェクトマネジメント能力
→ それぞれのメンバーからの信頼、メンバーの力を引き出しているのか(個々のメンバーが目標を達成しているのか)、プロジェクトの目標を達成しているのかを定量的に判断。ランチや飲みなどの設定などもメンバーの信頼を得るひとつの方法で、人を動かすポイントを持っているか。

● コミュニケーション能力
→ プロジェクトマネジメント能力の他に、クライアントや外注会社との連絡方法、連絡の仕方により事業における機会を損失している場合があります。それを定量的に判断するためにメールやコミュニケーションツールでのコミュニケーションの仕方を定量的に判断。

● 企画力
→ プランナーがいる企業もありますが、ディレクターやプロデューサーが企画から実行まで見るというケースが多いでしょう。企画は企画するだけでは意味がないので、アイデアが幾つ・どのレベルで・どれくらいの期間でリリースされたのかを定量的に判断

● 業務遂行力
→ プロジェクトマネジメント能力の他に、エンジニアやデザイナーとコミュニケーションをとったり、プロジェクトや小さな機能などをどのように進めているのかが大切です。業務をいかに効率的に進められるかツールを提案したり、ツールを普及させたりして、施策の実行回数をどのように増やしたかなどを定量的に判断。イメージはスクラムマスターに近い

● サービスグロース能力
→ ウェブサービス・アプリケーションの開発現場ではインストール数、ユーザー数、PV数、売上などそれぞれ目標が異なります。しかしユーザーに対して提供できる価値(数字)を見る能力は確実に必要です。Googleアナリティクスや企業独自の分析ツール、売上につながるようなユーザーアクションの分析などサービスと数字を紐づける、両方考えられる能力は定量的に判断するべき能力です。

以上のようにディレクターの仕事内容を現場サイドからしっかり把握して、それぞれにポイントや重みをつけて評価していくことが大切です。それぞれでも大きな能力になりますので、ディレクターやプロデューサーとは呼ばずにひとつの能力を極めていくようなキャリアプラン・ケースがあっても良いかもしれません。

2. キャリアプランの多様化

1.で作成した評価制度を元に、キャリアプランを多様化させます。エンジニアにも様々な職種があるように分析ならアナリスト職のようなものを作成したり、キャリアプランを多様化させ、それごとに成果を残した場合は評価すると、個々のキャリアを考えられている企業というようになるでしょう。

ディレクター・プロデューサーといっても全員が全員1であげている能力が高ければ良いですが、人には得意不得意があります。ディレクター・プロデューサーとして一括りで評価されるのは難しいかもしれません。なのでキャリアプランを多様化してあげることで得意な能力に集中してもらうという事が大切になるのではないでしょうか。

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最後に:スタートアップへの転職が増えている

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上記のような条件を満たす企業は中々少ないかもしれません。

しかし、周りのディレクターやプロデューサーを見ているとスタートアップ・ベンチャー企業への転職が増えています。優秀なディレクターやプロデューサーがスタートアップへの転職では何が得られるのか考えてみました。

ディレクター・プロデューサーがスタートアップへの転職を考える理由

● 評価制度をこれから一緒に作成することができる
● 仕事量はいずれにせよ多いので、責任ある仕事を任された方が良い(会社のサイズとしてスタートアップの方が一人にかかる責任は大きい)
● 仕事量は変わらないとすれば、ストックオプションなど金銭的なインセンティブが期待できる企業の方が将来的にお得
● 人数や構造的にマネージメント層へ行きやすい
● IPOやバイアウトなど人とは違った経験が積める可能性

以上のような条件があるからではないでしょうか。このような条件のあるスタートアップ企業と大手企業が戦うというのは大手企業の評価制度や人数的に難しいポイントかもしれません。

しかし、大手企業でもキャリアプランの多様性や評価制度のポイントを整備すれば、優秀なディレクターやプロデューサーが長期的にいやすく、成果を出せる、プロダクトに集中しやすい組織になるのではないでしょうか。

ディレクター・プロデューサーがいなくなることでのマイナスポイント

ディレクターやプロデューサーがいなくなると、エンジニア・デザイナーに与えるダメージも大きいです。

● エンジニア、デザイナーが企画、仕様作成、ワイヤー設計に責任を持つ
● 進捗管理は各々で行い、一つの機能やサービスごとなどで共有
● エンジニア、デザイナー同士のコミュニケーション量が増える
● 作業者が集中しにくい

エンジニア、デザイナーがディレクターが行う役割を行うのは想像以上に心労がたまるものです。開発やクリエイティブへの集中力を削いでしまうかもしれません。

採用担当者、事業責任者は、ディレクターのキャリアプランや評価制度について真剣に考えて、ディレクターがいなくなってしまうことの事業・会社的なインパクトという視点で考える必要があるでしょう。

コンテンツが膨大に増えていく中、メディアスタートアップも増加しています。当然、他社のサービスとの差別化が必要になります。

今後はさらに企画や実行力、業務推進力などで圧倒できるようなディレクターやプロデューサーの価値も高まっていくのではないでしょうか。

ディレクターやプロデューサーへの対応を今一度考えて見る時期なのかもしれません。

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