サイバーエージェントの主席エンジニアの退職から見るエンジニアのキャリア構築の複雑さ

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サイバーエージェントの藤田晋社長がブログを自身のAmebaブログを更新して、主席エンジニアとして活躍していた名村氏の退職を綴った。

名村氏はサイバーエージェントが手がける有名サービスであるオンラインアバター仮想空間サービスアメーバピグ、エイベックス社と子会社として運営しているサブスクリプション型の音楽配信サービスAWA、との共同出資でできたAbemaTVなどの大規模な開発を行ってきたとのことで、サイバーエージェント社にとっては非常に辛い退職となった。

藤田氏はブログの中で、「やはり海外で働きたい」と話した名村氏の言葉を引用しつつ、

私は返す言葉がありません
でした。過去にもう何回も引きとめて
きた経緯があるからです。

と述べている。なかなか企業の中での悪い話というのは書きにくい、表に出したくないものだが、サイバーエージェントの透明性を表している一つの事例かもしれない。

このような言葉を見てみると、サイバーエージェントだけではなく昨今のエンジニアのキャリアについても考えさせられることが多い。今回は、このような事例を参考にエンジニアのキャリアについてもう少し考えてみたい。

藤田氏のブログはこちら

http://ameblo.jp/shibuya/entry-12171850434.html

エンジニアのキャリア設計の複雑さ

エンジニアのキャリアの設計は非常に難しくなってきている。というのも、筆者としては3つの点が挙げられると考えている。

・エンジニア人口の増加
・インターネットサービスの難しさ
・それに伴うエンジニアの企業内での評価の難しさ

今回は3点に絞ってキャリア設計の複雑さについてまとめてみたい。

1. エンジニア人口の増加

まず初めに、エンジニア人口の増加とキャリア設計の複雑さは直接的にな関わりはない。

しかし、プログラミング教育の進展により、オンラインでエンジニアを育成するというサービスが伸びている中で、エンジニア人口が増加してくると、相対評価になるために技術レベルによっては所属する企業で「エンジニアとしてのスキルレベルに至ってない」という判断をされてしまう可能性が高い

そうなってくるとエンジニアとしてのスキルを高めるということにはどういう点があるのか、単純に実装スキルが高ければいいのかというところが争点になってくる。

エンジニアの適切な教育システムの必要性

技術レベルが足りていないような人材に対して、サービスの中で成長を促すか、新しい環境を用意するか、エンジニアとしてではなく、適切な形で他の職種に変更させるなどという人事的な配慮も必要になってくるかもしれない。

また、エンジニアの増加は採用的なミスでもあるので、「エンジニアが成長していない」という前に成長を促すような仕組み作りを行う必要性がある。

ペアプロなどのチーム単位のミクロな取り組みではなく、研修制度・定期的な異動やコンペ、プログラミングの大会を定期的に実施するなど成長させるための仕組みは様々なものがある

なので、エンジニア人口が増加してしまうと間接的にキャリア設計が複雑になってくる。

2. インターネットサービスの難しさ

インターネットサービスは移り変わりが激しいことは言うまでもないだろう。10年前にmixiが日本であれほどまでに流行していたが、今となってはモンスターストライク頼みの一本足のような企業となった。

2000年後半からソーシャルゲームバブルが起き始めて、GREE、DeNAを中心に多くのベンチャーがこぞってソーシャルゲームの新しいタイトルを投入してきた。そして市場はどんどん大きくなって、日本のオンラインプラットフォームの市場規模は約8,000億円という規模にまで成長した。

オンラインゲーム

このような中で、DeNAやGREEは新卒エンジニアに優秀であれば1000万を超える金額を提示し、また他の業界からも転職するエンジニアが相次いだ。しかし、業績が悪化したGREEはエンジニア他の早期退職を促した形で、多くのエンジニアがさらに2,3年というスパンで転職している。

このようにインターネットサービスは非常に移り変わりが激しく、今あるようなTwitter、Facebook、Instagram、LINE、Snapchatのような規模の大きいコミュニケーション・動画・画像サービスもどうなっているかわからない。

さらに上述したサイバーエージェントの新しい事業になるAbemaTVやAWAのような新しいインターネットビジネスも成功するか、規模が出るのかもわからない世界だ。

サイバーエージェントはコミュニティサービスを100個作ると4~5年前から行ってきたが、今主力となっているサービスには当時作られているサービスはない。ソーシャルゲームとしては「ガールフレンド(仮)」や子会社であるCygamesから多くの有名タイトルを提供しているが、ゲームタイトルも1,2年で移り変わっていく。

プロダクトと言語選択

このような土壌の中でエンジニアの評価やキャリア設計というのは非常に難しい。シングルページでのフロントエンドのアニメーションごりごりのゲームや、Unityなどの3Dのゲーム、ゲームだけを取っても様々な方法があり、それに応じて言語も異なる。ゲームが好きで、ゲームだけをやるのであれば、苦にはならないかもしれないが、そうでない人にとっては非常に難しい選択だ。

インターネットビジネスの種類によってエンジニアとして言語を選択していってしまうとキャリア設計がより複雑化する。単なるフレームワークを覚えたり、小手先のスキルだけではなく、「一生廃れないスキル」というものを考えてキャリア選択・設計していかなければならない

3. エンジニアの評価の複雑さ

インターネットビジネスによって、選択する言語も働き方も変わってくることを述べてきたが、難しいのは事業を行っているのはプロデューサーやディレクター、事業責任者といったビジネス側の職種の人間だけではないということ。

事業は通常、エンジニアやデザイナー、営業などの多くの人が関わることによって成立しており、エンジニアもプロダクトを作る時にビジネス的な思考を求められるケースも少なくない。

ビジネス思考が非常に強いエンジニアもいる中で、自分でサービスをローンチしてそれで生活していくというようなエンジニアもいる。

企業でエンジニアとしての実装スキルだけではなく、ビジネス・マーケティングなどのスキルを定量的に評価している企業がどれくらいあるのだろうか。おそらくはそこまで多くはないのではないだろうか。特に大企業ではそのような評価システムを入れてしまうと複雑になってしまい、定量化しにくい。

しかし、それではただ実装だけしていて他の人とのコミュニケーションをあまり取れないが実装力が高いという人が評価されるという歪んだ評価構造が成立してしまう

エンジニアなので実装力が高い人が評価されるべきだというのは至極当然なのだが、事業が成り立たないと企業としては存続できない。そのためにコミュニケーション・ブリッジ役というのは必ず必要になる。

ここでいうブリッジ役はある意味「調整をしなくてはいけない、損をする役回り」になる。こういうポジションが必要になってしまう大企業におけるエンジニアの評価や、エンジニア自体のモチベーション、キャリア設計は非常に難しくなっている。またその損する役回りの重要性と評価の難しさをどれだけ人事やビジネス職である人間がわかっているのかも疑問である。

そこからビジネス側でマーケティング的な業務を行う人もいれば、プロダクト責任者として事業サイドをより見ていくという人もいる。

このようにエンジニアのキャリアは複雑化しており、そのような理由を3つ挙げてきた。

ここからはエンジニアをどうやって生かしていくべきなのかというところについて少し掘り下げてみたい。

エンジニアと事業的コミュニケーションを取る事が重要

上で述べてきた、サイバーエージェントの藤田氏のブログにはさらに採用を強化するということが書かれているが、これは辞める理由を食い止めるのではなく、採用を強化してその中の人材をどうにか育てるという方向性だ。

名村くんの他にも少し退社が続いた
こともあり、強みの技術力を守り、
さらに強化していかなければ
ならないということで、
先日の役員合宿では採用、広報、
待遇改善などの技術力強化対策を
打ち出すことを決めました。

この考え方が難しいのではないかと、同じくサイバーエージェントに所属しているエンジニアの社員が述べている。確かに今回の件だけを見てみると非常に難しい。

名村氏の海外で働きたいということに対して、それが可能になるプロダクトを作っていないサイバーエージェントの事業が問題のように思えるが、一人のエンジニアの意見でそういうプロダクトを作るということはない。

つまり、海外に挑戦するようなキャリアを会社として提供するのであれば、エンジニアと連携して、海外にチャレンジできるようなプロダクト作りでの方向性を模索する事が大切になってくるのではないだろうか。エンジニアを減らさない改革というのは難しくもあるが、対話を続ければ必ず答えは見つかるはずだ。

エンジニアを事業の中でどう生かすのか「37signals」の例

37signals

エンジニアから起業した企業も多くなってきている。Facebookのマークザッカーバーグや元Livedoorの堀江貴文氏、Twitterの創業者であるジャックドーシーがプログラミングをしていた事は有名だが、エンジニアだからこその事業やそれをスケールさせられるだけのスピード感がある。

また、海外では「37signals」というRuby on Railsというフレームワークを開発した会社が一つのオフィスではなく海外に散らばったメンバーで企業を回している。「リモートワーク」と呼ばれる働き方を実践しながら、多くのSaas型のプロダクトを開発していることは有名だ。

エンジニアと事業の方向性やエンジニアのスキル・人間性を捉えた上で適切に評価して、仕事を分配して成功している事例の一部になっており、エンジニアの中でも好きな企業にGithub社やGoogle社と並んで選択する人もいる。

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

リモートワークにすることの意味

エンジニアに限らないかもしれないが、昨今クラウドソーシングサービスが伸びてきている理由と少し近いところがある。

・時間をコントロールしつつ、様々な事を並行しておこなう
・時間の中でコミットして、成果に対する報酬をもらう
・自由度が高い
・通勤などの時間を効率的に活用
・余計なコミュニケーションストレスを発生させない

リモートワークを導入することによるリスクも多いが、エンジニアドリヴンであるビジネスにおいてはその方が効率も高いし、成果を残す可能性が高い。

エンジニアの流出を防いだり・最大限の力を発揮させたいというエンジニアライクな企業はこのようなスタイルを一部導入しているところも増えてきた。

日本から海外に展開するようなサービスであれば、シリコンバレーやシンガポール、ロンドンなどの各国に住んでコードを書くこともできるし、事実そのような生活をしたいというエンジニアは非常多い。

また、英語を勉強したり、留学しにいくエンジニアもいるという現状もある中で、エンジニアを事業の中でどのように生かしていくのか、その対策の重要度はインターネットサービスが複雑化するにつれて高まってきている

上で述べたように、エンジニアもより事業へのコミットが求められる事になるかもしれないが、エンジニアとして事業にコミットするのは実装だけではない。勿論実装だけしていたいエンジニアにとっては苦痛なのでそれを求められたら環境を変えるべきだ。

そのようなエンジニアが将来的に求められていくのかは別なので、エンジニアとしてキャリア構築はかなり複雑になっている。

海外に挑戦するフリマアプリ「メルカリ」の採用のうまさ

メルカリ

CMでも話題のフリマアプリを提供しているメルカリの採用が非常に上手いという話・噂をよく耳にする。サイバーエージェントやDeNAなどから優秀なデザイナーやエンジニアが転職しているようだ。メルカリの社長は、映画生活、フォト蔵、まちつく!などのサービスを展開し、ソーシャルゲームを開発・運営するZinga社に買収されたウノウ社の社長であった、山田進太郎氏。

執行役員、取締役にも様々なインターネット企業で成功してきたメンバーが揃っており、フリマアプリとしては後発ながら日本市場でも独占し、現在は北米とイギリスなどのヨーロッパでも展開している。

また、LINEがプラットフォームを駆使して展開していたLINE MALLもサービスを終了して、フリマアプリの日本市場もうメルカリが取ったといっても過言ではない。

そのような中で、資金調達も合計で126億円に登り、そのお金をR&Dや人材の雇用につなげており、mercanという独自のブランディングサイトも展開し、サービスの強さ・ブランディング・チャレンジできる環境があるという見せ方によって、採用力の高い会社といえる。

mercan
http://mercan.mercari.com/

2月29日にLINEがフリマアプリ「LINE MALL」のサービス終了(5月末)を発表したのは驚きだったが、フリマアプリで先行するメルカリがさらに驚くような大型の資金調達を発表した。メルカリは3月2日、三井物産、日本政策投資銀行、ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合および既存株主のグロービス・キャピタル・パートナーズ、World Innovation Lab(WiL)、グローバル・ブレイン、経営陣を引受先とした第三者割当増資による総額約84億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

メルカリが外部から調達した資金は合計126億円に上る。

同社が提供するフリマアプリ「メルカリ」のダウンロード数は日米合計で3200万件(日本:2500万件、米国:700万件)、米国でも現在コマースカテゴリで10位以内をキープしているという。月間の流通額は国内で100億円超、2015年末には、黒字化についても明らかにしている。

出典:http://jp.techcrunch.com/2016/03/02/mercari-raised/

メルカリのような環境はまさにエンジニアが働きたい会社といってもいいのではないだろうか。

メルカリのフリマアプリだけでなく、メルカリアッテなどの新規開発しているサービスも幾つかあるようで、黒字化・キャッシュもある中で優秀人材の採用にもそれなりにお金を支払えつつ、海外での展開で、チャレンジできる環境もある。

プロダクト、キャッシュ、場所とエンジニアが働きたい条件が整っている会社であるように思える。

今後はロンドンなどヨーロッパに展開していくようなので、ヨーロッパでも挑戦できる環境が整うようだ。
メルカリの事例は一例だが、少なくとも「海外にチャレンジしたい」というエンジニアにとっては魅力的ではないだろうか。

このような面でみると、海外で働ける環境を作れるようなプロダクトを開発、事業をエンジニアと作っていくというのも重要だ。

最後に

エンジニアがやるべきこと

エンジニアのキャリアは複雑化してきているが、企業に全て求める、与えられるのを待つといのは無理がある。大企業であれば、特に企業の評価や待遇を変えていくには時間もお金もかかってしまい、難しい。

大事なのは自分のキャリアパスを考えて、自分でその環境を作るか、求めて環境を変えていく必要がある。

企業側が意識すべきこと

エンジニアに歩み寄りつつ、キャリアをどうやったら作れるのかを考えて、プロダクト決定、開発環境、職場環境を作っていく必要がある。

また、サイバーエージェント藤田社長の「退職マネジメント」の上手さがブログによって際立った。社内的にも主席エンジニアが辞めてしまう事は大きいが、それを他の人材の存在を明かしつつ、技術力の成長を認めるという点と、辞めた人から後々漏れてしまうのであれば先に出して「退職者に対してしっかりしているよ」、というのが伝わる内容だ。

ここで将来を一つ考えてみるきっかけになれば幸いです。

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